-恵恋 side-
次の日朝起きて熱を
計ってみると
微熱まで下がっていた。
よしっこれなら学校行ける。
準備しなくっちゃ!
私はるんるん気分で
学校へ向かうと
下駄箱で零太くんの姿を見つけた。
「あ」
私に気づいて
こちらを見ていた。
「おはよっ零太くん」
「熱下がったんだな」
昨日電話をくれたと思うと
なんだか気恥ずかしかった。
「う、うん!ごめんね心配かけちゃって」
「…心配なんかしてねーよ」
いたっ!
も~デコピンしなくてもいいじゃん。
零太くんはそっぽを向いてしまった。
「行くぞ」
その声と共に私は
零太くんの隣を歩いたのだった。
「恵恋ー!熱は下がった?大丈夫?」
教室に入ると
綾乃ちゃんが心配した様子で
駆け寄ってきた。
「あははっごめんね。もう大丈夫!」
綾乃ちゃんにも心配かけちゃった。
これからは体調管理気を付けないと。
午後の授業を終えたところで
少しだけ身体がだるかった。
やば、熱上がっちゃったかな。
でももう帰るだけだし大丈夫よね。
「恵恋、帰るか」
「あっうん…」
迷惑かけたくないし
気付かれないようにしないと。
私は無理に作り笑いをして
誤魔化したのだった。
-零太 side-
こいつ、顔赤くねーか?
気の所為?
もしかしてまた熱が…
そうは思ったが恵恋は
いつも通りの笑顔だし
俺の気の所為、だよな。
そんなことを思いつつ
校門を出ようとすると
後ろから声がした。
「れーいーたー!」
この声は凪か。
「俺も一緒に帰らせて!」
笑顔で玄関から走ってきていた。
恵恋もいるけど、まあいいか。
あれ?恵恋笑ってる?
「あれっ零太彼女と……ってあぁ!!」
なんだ?
なんで恵恋を見て指さしてるんだ?
「恵恋じゃん♪やっと会えた!」
「ふふっ久しぶり凪くん」
……はぁっ?!
は?どういうこと?
なんでこいつらが?
呆然としている俺を他所に
2人は仲良く話を始めていた。
「え、お前ら知り合いなの?」
「そうそう、転校前に偶然会って学校までの道を教えてもらったんだよ」
「そうなのっでも凪くんが零太くんの友だちだったなんて」
と、2人して目をキラキラさせていた。
なんだそれ。
…なんかイライラする。
どこから湧いたのか分からない
イライラに眉間にシワを寄せる。
にしてもなんでこいつら
こんなに仲いいんだよ。
俺のことなど
お構いなしといった様子だった。
てかさっきから凪の顔が
赤くなってるように
見えるんだが…
じっと凪を見ていて
あることを思い出した。
もしかしてこいつが
一目惚れした女って……
いやいや、それはありえないよな?
でも凪がこんなに
嬉しそうに話すってことは…
…まじかよ。
額に冷や汗が滲んだ。
「そういえば何で2人は一緒に帰ってたの?」
やべっついにきた。
本当のことを言うべきかどうしよう。
「あっその、私たち付き合ってるんだ…」
恵恋は顔を赤くさせながら
応えたのだった。
凪…?
チラッと凪へ視線を向けた。
「げっ…」
おいおい。そんな目でみんなよ。
凪は涙を目にいっぱい溜めて
俺を睨んでいた。
やっぱこいつの好きな奴って
恵恋のことだったのか。
俺はなんてことだ、と
頭を抱えた。
「ま、まぁ…そういうことだから…凪?」
「零太の、零太の……嫁泥棒ー!!!」
うわ~ん!!と泣き叫びながら
凪はどこかへと走り去ってしまった。
嫁泥棒って…
恵恋を見るとキョトンとした様子で
凪の去った後を見ていた。
「嫁泥棒ってどういうこと?」
「あ~まぁ、気にするな」
こりゃ事情を話す
必要があるな…
あー何でこう
めんどくさいことになるんだか。