「今日…お母さんの命日なの」

「えっ…」

「私が中学2年生のとき…過労死だった。

私は…お母さんの初恋の人との間にできた子供だったんだけど…

お母さんは…その人に捨てられて、その人はお母さんの親友と結婚したの」

「…」

「私が…私の顔が父親にそっくりなんだって…自分を捨てた父親にそっくりだって…

お母さん、私のことを見ようともしなかった。

いつも一人ぼっちで、寂しかった…。

でも、私がおもちゃの眼鏡をかけたときは…いつもより少し優しくて

それが嬉しくて、お母さんの望むような子になろうと思って…

勉強もがんばったし…優等生になったらお母さんが喜んでくれると思った。」

「本当は…ありのままの自分を、本当の私を見てほしいって思いもあったけど…

お母さんがそれを望むならそれでいいと思った。

これをかけてる間は…もう1人の自分になれた。」

「だけど…お母さんは中2の時、亡くなった。

過労死だって…私のために、昼も夜も働いて…でも最後にお母さんが

私を見て笑ってくれたの。それだけで…もう十分だった。」




「もうお母さんが帰ってくることはないって分かってるけど…

気がつけばずっとそのままの私で生きてきた。」