まるで違う国に足を踏み入れたかのような街並みは煉瓦造りのヨーロッパを思わせるもので、異国の文化を取り入れたその異色に全身が惹かれた。
少女は、ゆっくりと歩き出した。
薄汚れたスニーカーで歩く音だけが響く。人っ子一人いない。誰も、この街に住んでいないかのように気配を感じない。
それなのに此処は、どうしてか自分の居場所のようにすら感じた。
「…うああぁぁぁあああっっ!!!」
「ひっ…!」
突然、辺りに響き渡った断末魔のような叫び声に少女は短く声を上げる。
叫び声の方に顔を向けて、少女はその大きな瞳をさらに見開かせた。
逃げるのに必死で気付かなかったが、この街の周囲は大きな木々で囲われていた。建物を超える程の高さと大きさの大木が立ち並び、それはまるでこの街を飲み込もうとしているかのようにうねっている。
「…な、に……?」
圧倒されて足の力が抜け、少女はその場にへたり込む。追い掛けていた奴らは一人もいないし、一体この場所は何処なのだろうか。
疑問だけが頭の中を駆け巡る。
「………みーつけたぁ♡」
「…ッッ!!?」
幼子のような声が耳元で聞こえたのを最後に、少女は意識を失った。