アタシと母さんが日本に戻ってくるときに、随分と世話になった。

岬さんはオヤジの部下だったこともあるらしい。

「詳しくは言えないが、私も当面日本にいることになった。今回、リカが巻き込まれている事件に関して知ってることをすべて報告してほしい」

オヤジは無駄なことは一切話さない。

昔からそうだ。

アタシにとってオヤジはオヤジであるとともに、訓練を受けてきた上官でもある。

オヤジの言うことは絶対だった。

アタシは、知ってることをできるだけ詳しく話した。

全部で2時間ぐらいかかった。

オヤジはその間、相槌(あいづち)を打つだけでずっと話を聞いていた。

「なるほど、分かった。その坂本君と森本さんの行方は、私のほうで捜してやろう。リカは傷の治療に専念しなさい」

そう言ってアタシの頭をなでてくれた。

「オヤジが探してくれるの?なら安心だ」

昔からオヤジは約束を破ったことが無い。

できないことは言わない人間だった。

「リカ、これを渡しておく」

オヤジは小さな箱を差し出す。