「オマエ、あそこで何をしてた?何を見たんだ」

「二人を狙っている奴らがいたから、助けようとしたんだ。もっとも、アタシがこのありさまなんだけどね」

「狙ってるって、さらおうとしていたってことか?」

「さらうか殺すか、どちらか知らないけどね。ただ二人を中心に包囲(ほうい)していたのは確かだよ」

「包囲(ほうい)?」

「アタシが倒したのは3人だったから、少なくとも4人以上でだね」

「倒したって、現場には他に誰もいなかったぞ」

「あぁ、多分回収したんだよ。当たり前じゃん」

「回収?」

「刑事さんだって、仲間がやられたら助けて回収するだろ。それと同じだよ」

「しかし、オマエが刺されてから俺たちが到着するまでそんなに時間は無かったはずだ」

「それだけ、敵が優秀だってことだよ」

なんか、新米兵士と話しているみたいで疲れるなぁ。

アタシはレクチャーしている気分になってきた。

「今回の件、森本紀代乃の父親がからんでると思うか?」

「分からないけど、そうなんじゃないかな?ただ、娘を狙うならもっとうまいやり方がある気もするけどね」

「確かに・・」

何が確かにだよ。

アタシみたいな小娘にヒントもらってどうすんだ。

まったく・・。

「それと、森本紀代乃と坂本聡の行方が一昨日から分からなくなった」

「えっ?」

「彼らがどこにいるか心当たりはないか?」

「どうして?警察で保護しなかったのかよ?」

「いや・・。保護しようとしてはいたんだが・・。どちらも消えてしまった」