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第二十話:オヤジ
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目を覚ますとアタシはベッド上にいた。

白い壁、白い天井、腕につながる点滴。

病院か。

あの時、アタシは坂本の腕に抱きかかえられて・・。

あっ、そうだった。

アタシ、坂本のこと好きなんだ。

思い出すと、急に顔が熱くなった。

しかし、なんて失態だろう・・。

敵の接近に気がつかないなんて。

オヤジが知ったら激怒だな。

傷は・・。

アタシは上半身を起こしてみる。

少し痛いが動けないほどではない。

コンコン

ドアをノックする音がした。

「はい?」

「高瀬だ。入っていいか」

高瀬・・?

「ああ、刑事さんか。入っていいよ」

「仙崎、体調はどうだ?」

「ありがとう。ちょっと痛みはあるけど、全然大丈夫だよ」

「腹部の傷だが8針ほど縫ってある。全治一ヶ月だそうだ」

「そっか。でもそれぐらいの傷で気を失っちゃうとは・・。ちょっと自己嫌悪だな」

「誰にやられた?」

高瀬が真剣な顔で聞いてくる。

答えにくい質問してくるなぁ。

「分からない。後ろから首筋にナイフをあてられて、わき腹をブスリだったから顔は見てないよ」

こんなことを人に言わなくちゃいけないなんて・・。