「生きる必要が無いから、体のすべての機能を戦闘に振り向けることができる。だからあなたよりも早く動けます」

「けど、守屋さんが死んだら、もう1人だって死ぬだろう」

「私の中に・・もう1人はいないんですよ。そう京子はもういないんです・・。」

守屋が悲しそうに言った。



俺たちは極(きょく)の本部に連れて行かれることなった。

ここでは守りきれないという守屋の判断からだ。

本部は秘密らしく、俺たちは目隠しをされた上で車の後部座席に乗せられた。

「しかし、びっくりだよな。守屋がおっさんじゃなくて、おばさんだったなんてな」

俺はサッシに話しかける。

さっきの話から、守屋が実は女だったってことが分かった。

まあもっとも守屋も中身は俺と同じで男みたいだが・・。

サッシは嫌そうな顔でそれを聞いている。

キヨノのイメージが崩れるとでも言いたげだ。

「あのさ、拓っていつまで拓なの?キヨノさんには戻らないの?」

サッシが心配そうに聞いてくる。

「朝には戻るさ。俺は、キヨノが嫌な目にあった時か、意識が無い時しか表に出てこれないんだ。だからもうしばらくしてキヨノが目を覚ましたら俺はいなくなるよ」

「そっか」

サッシは安心そうな表情で言う。

こいつ俺のおかげでキヨノと付き合えたくせに。

大体、キヨノも趣味悪いよな。

こんな何のとりえも無いような奴が好きだなんて・・。

でも・・。

実は最初から分かっていた。

サッシのことをキヨノが好きになることを。

だからネットでサッシを見つけて、サッシがキヨノと出会うよう仕向けた。

俺にはキヨノのすべてが分かる。

本人が気づいていないことまで・・。