見るとキヨノさんは泣いていた。
僕はキヨノさんを泣かせてばかりだ。
「ゴメン・・」
僕もキヨノさんを抱きしめる。
そして続ける。
「僕もキヨノさんと会うまでは、いいことなんてなかったんだ。このまま年をとって、つまらない人生がいつか終わっていく、そう思ってた。だから、あやまることなんてないよ」
「でも・・」
「それに、今はむしろ感謝してるんだ。キヨノさんと会ってからの僕は、やっと自分の人生が手に入った気がしている。脇役じゃなくて、初めて主人公になれた気がするんだ」
「えっ?」
「おかしいでしょ。もしかしたらゲームのやりすぎかもしれない」
そう言って、僕はキヨノさんににっこりと笑いかけた。
キヨノさんも少し笑ったようだ。
*
しばらく話したあと、僕たちは別々のベッドで眠った。
一緒のベッドで眠りたい気がしたけど、それを言い出す勇気が無かった。
疲れているのかキヨノさんはすぐに寝息を立て始めた。
いろいろなことがあったけど、キヨノさんの隣にいれることが幸せだった。
僕はキヨノさんことが大好きで、キヨノさんも僕のことを好きだという。
それだけで十分だった。
もし死ぬようなことがあっても、それはそれでかまわない。
でも、僕が死んだらキヨノさんも・・。
なら・・、僕は生きなくちゃいけない。
強くなりたい・・。
キヨノさんを守って、自分を守れるぐらいに。
こんな時、ゲームだったら不思議な力を手に入れて、とかなるんだろうけど現実はそんなに甘くはないよな。
僕も、もう寝よう。
*