見るとキヨノさんは泣いていた。

僕はキヨノさんを泣かせてばかりだ。

「ゴメン・・」

僕もキヨノさんを抱きしめる。

そして続ける。

「僕もキヨノさんと会うまでは、いいことなんてなかったんだ。このまま年をとって、つまらない人生がいつか終わっていく、そう思ってた。だから、あやまることなんてないよ」

「でも・・」

「それに、今はむしろ感謝してるんだ。キヨノさんと会ってからの僕は、やっと自分の人生が手に入った気がしている。脇役じゃなくて、初めて主人公になれた気がするんだ」

「えっ?」

「おかしいでしょ。もしかしたらゲームのやりすぎかもしれない」

そう言って、僕はキヨノさんににっこりと笑いかけた。

キヨノさんも少し笑ったようだ。



しばらく話したあと、僕たちは別々のベッドで眠った。

一緒のベッドで眠りたい気がしたけど、それを言い出す勇気が無かった。

疲れているのかキヨノさんはすぐに寝息を立て始めた。

いろいろなことがあったけど、キヨノさんの隣にいれることが幸せだった。

僕はキヨノさんことが大好きで、キヨノさんも僕のことを好きだという。

それだけで十分だった。

もし死ぬようなことがあっても、それはそれでかまわない。

でも、僕が死んだらキヨノさんも・・。

なら・・、僕は生きなくちゃいけない。

強くなりたい・・。

キヨノさんを守って、自分を守れるぐらいに。

こんな時、ゲームだったら不思議な力を手に入れて、とかなるんだろうけど現実はそんなに甘くはないよな。

僕も、もう寝よう。