「えっ・・」
サトシが驚く。
「でも、なんで私の心を殺す必要があるんです? 」
キヨノが聞いてくる。
「それは、あなたの中を空っぽにするためです。心を殺すことで、あなたには何も無くなります。いわば人の形をした器です。望楽土では、その器を虚と呼んでいます」
私はできるだけ簡単に説明をした。
「虚・・」
キヨノがつぶやいた。
「キヨノちゃん、いいですか、何があっても決して絶望しないでください。絶望した瞬間に、あなたの心は存在を失います」
私は、キヨノにしっかり諭すように言った。
「サトシ君、あなたは何があっても生きてください。そしてキヨノちゃんに生きる希望を与えてください。キヨノちゃんが愛することができるのは永遠にあなただけなのですから・・」
私は言いながら思い出していた。
京子が愛したあの少年を・・。
少年が死んだとき、京子は絶望した。
そして京子の心は私の中から消えていった。
この二人にはそんな悲しい思いはさせたくない。
私は心からそう思った。
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第十八話へ続く
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