僕は少しがっかりした。

どう考えても自分とは釣り合わない気がしたからだ。

彼女の名前は森本紀代乃(もりもときよの)。

慶明大の3年生で、この近くで一人暮らしをしているとのことだ。

「あっ、だからしばらくコンビニに来なかったんですね」

やっぱり店に来なかったことと事件は全然関係ないじゃん。

僕は拓がキヨノさんを犯人と疑っていたことを思い出した。

「でもこれから心配です。帰り道で人通りもないところですから」

キヨノさんが不安そうにつぶやく。

確かに毎日通る道でそんな事件が起こったら不安でしかたが無い。

その時の僕はなぜか大胆になっていた。

「もし良かったら僕が家まで送ります」

「えっ」

キヨノさんはおどろいたような表情で僕を見る。

「僕コンビニのバイトが12時に終わるんです。もしその時間でよければ送りますよ。キヨノさん、いつも11時過ぎにコンビニに寄るでしょ」

「いいんですか? 」

キヨノさんはびっくりするぐらい素直に言った。

「はい。僕も一人暮らしなので、こんな時は協力し合わないと」

僕は舞い上がって我ながら意味不明のことを言っていた。