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急ぐ必要があった。
もし、サッシが殺されたらキヨノは本当に生きる気力を無くしてしまう。
まずは島本からだ。
この前も奴を殺すつもりだったが、キヨノが望んでいないことだからできなかった。
俺は、キヨノが望まないことはできない。
それに、嫌がることはしたくもない。
だから、俺が表に出ている時でも、キヨノが嫌がるとすぐに意識を失ってしまう。
でも今なら違うはずだ。
キヨノは、島本もオヤジのことも許さないと思っている。
俺は、慶明大学のキャンパスへと向かっていた。
夜だが今の時間なら島本は研究所にいるはずだ。
研究所の明かりはいつもと同じように一部屋だけついている。
島本の部屋だ。
俺は、まっすぐそこに向かった。
会ったときに、キヨノだって思われるようにしなくちゃな。
島本の部屋の前で、ドアをノックする。
中から返事は返ってこない。
「島本先生・・」
俺は外から声をかけてみる。
しかし、やはり何の反応もない。
ドアの開けてみると、鍵はかかっていなかった。
俺はゆっくり部屋に入った。
すると部屋の真ん中に島本が倒れていた。
島本の体の周りには血溜まりができている。
俺は突然こんなことを見ても何も思わない。
ただ事実を事実と認識して、受け入れるだけだ。