「その殺された人はあなたの後をつけていたんです。僕はあなたと、その人の後ろを歩いていたんです」

なんとか、彼女の関心を引きたくて僕はそう言った。

「えっ、まさか? 」

これは効果があったようだ。



僕達は近くの喫茶店に入った。

この街にはスタバなんて気のきいたものは無い。

昭和ですか?ってぐらいレトロな雰囲気のお店だ。

僕は彼女に当日のことを詳しく話しはじめた。

彼女はびっくりした様子で話を聞いている。

「あの時、角を曲がったあと誰かとすれ違いませんでした? 」

僕は話の最後にそう聞いた。

「いいえ、誰もいなかったと思います。私はあの近くに住んでいるのですが、家に帰るまで誰ともすれ違っていませんから」

彼女の表情は真剣そのものだ。

嘘を言っているとは思えない。

僕はこんな時だけど、こうやって彼女と二人で話せることを喜んでいた。

「そうですか。いったい誰がどうやって・・。」

僕はそんな名探偵みたいなセリフを言ってみる。

「家に帰る途中の道でそんなことが起こっていたなんて・・。私あの日の翌日から海外に行っていたものですから事件のことなんて全く知りませんでした」

彼女はおびえているようだった。

「海外ですか? 」

「はい。私、慶明大に行っているのですが教授の発表に付き添いでアメリカに行ってたんです」

えっ、慶明大?頭すごくいいんだ。