「仙崎はオマエを助けるためにケガをしたんだよ。オマエ、望楽土に命を狙われてるんだよ」
「望楽土? 」
初めて聞く言葉だった。
「望楽土ってのは、新興の宗教団体だよ。そこの森本さんや彼女のお父さんも信者だ」
「えっ? 」
僕はキヨノさんの方を見た。
キヨノさんは悲しそうな顔をして、うつむいている。
「でもなんで、その望楽土が僕を・・? 」
「さぁ、それは分からん。そのあたりは森本さんの方が良く知ってるんじゃないか?」
高瀬がキヨノさんを鋭い目で見つめる。
「私・・、何も知りません・・」
キヨノさんが言った。
「仙崎さんは、坂本君を始末する相談をしているのを聞いたそうだよ。もっとも、始末といっても殺すという意味なのかどうかは分からんのだがね」
柳田が言う。
「サトシ君を殺す・・。いったい誰がそんなことを? 」
キヨノさんの声が強くなる。
「君の大学の先生だそうだ」
柳田が答える。
「先生が・・。サトシ君を・・」
キヨノさんはうつむいて何か考え込むような様子になった。
「先生だけじゃない、森本さんのお父さんもからんでいるらしい」
「えっ、お父さんが・・」
キヨノさんが顔を一瞬あげて反応する。
そして、聞こえるか聞こえないかの小さな声でなにかブツブツ言っている。
それは「許さない」と言っているように聞こえた。
僕は自分の命が狙われていると聞いても、どこか他人事だった。
それよりも、キヨノさんが前みたいになってしまわないか心配だった。