「今月のバイト代はいったところだし。いいよ本当に」

「ありがとう。でも私サトシ君にいろいろなことしてもらってばっかりで・・」

「そんなの気にしないで。僕が好きでやってることだから」

それを聞くとキヨノさんは嬉しそうな顔した。

そしてニコニコしながら僕の顔を見てくる。

そして、僕たちはりんご飴を食べながら公園の中を散歩した。

キヨノさんはお祭りに来るのも初めてだから、何もかもが珍しいようだ。

ずいぶん人が増えてきたので、二人で歩いていると時々はぐれそうになる。

気がつくと、キヨノさんは僕のTシャツの裾をつかんでいた。

僕は、どきどきしていた。

キヨノさんがつかんだTシャツの裾から体温が伝わってくるような気がした。

歩いていると、人がぶつかってきてキヨノさんがよろめいた。

キヨノさんの手がTシャツの裾からはなれる。

僕は、その手をゆっくりとにぎった。

「ありがとう」

そう言って、キヨノさんはにっこりと笑った。

人ごみは嫌いだったけど、キヨノさんと一緒なら全然いやじゃなかった。

むしろこうして手をつないで歩いていることがとても幸せに感じた。