それどころか、苦しそうな表情をして歯をくいしばっている。
「先生どうしたんでしょう? 」
私は不安になって先生に聞く。
その時、キヨノちゃんが目を見開いた。
私と彼女の目があう。
彼女は先生の方を向いてニヤリと笑った。
「のぞき見たぁ、あんま、いい趣味じゃねぇな」
そして男の子のような口調で話し始めた。
「なっ・・、キヨノちゃんどうしたんだい? 」
先生もおどろいている。
「キヨノ? 今キヨノはいねぇよ」
キヨノちゃんはいつもと同じ声でそう言った。
ただ、話し方は全く違っていた。
「キヨノちゃんがいない? なら君は誰なんだい?」
先生は体を拘束しているマジックテープを確認しながら言った。
「あっ、俺? 俺はキヨノの味方さ。アンタ達が勝手にキヨノの頭の中をのぞこうとしているから来たんだよ」
「ちっ、別人格か・・」
先生がいまいましそうに言った。
「キヨノとサッシのことは、これ以上あんた達には教えないよ」
「サッシ? 」
先生が聞き返す。
「坂本聡のことさ。もっとも俺は会ったことないんだけどね」
キヨノちゃんはそう言うと、軽々と手足の拘束を引きちぎった。
私達が驚いていると、はねるように起き上がりベッドから飛び降りた。
そして、一瞬で先生に近づくと、片手で首をつかむ。
「ぐっ・・」
キヨノちゃんは首をつかんだまま先生の体を軽く持ち上げる。
私は成り行きについていけず、ただ見ていることしかできなかった。
彼女は、先生の首をしめあげながらニヤニヤしている。
「ははっ。ざまぁねぇな、島本」