俺は署の外で仙崎に会うことにした。

少なくとも、捜査ができないことぐらいは伝えておこうと思ったからだ。

「で、結局何にもできないって話なんだ」

仙崎が皮肉そうな表情でこっちを見てくる。

「すまない・・。ただ、坂本聡は危険な状態にある可能性がある。それに関しては、俺個人として動きたいと思っている」

「まあ気持ちだけ受け取っておくよ」

仙崎がそう言う。

「俺もできるだけのことはするつもりだ。何かあったらすぐ連絡してこい」

俺はそう言って、携帯を仙崎に渡した。

「なに、この携帯?」

「右上のボタン一つ押せば俺につながるように設定しておいた。あとは電源を入れさえすればGPSでお前が今どこにいるか分かるようになっている」

「ふーん。じゃ何かあったら助けに来てくれるんだ」

「あぁ、そのつもりだ」

「さんきゅ。ありがたく受け取っておくよ。もっとも何かあって助けが必要なときには、もう間に合わないかもだけどね」

確かに仙崎の言うとおりだ。

危険な状況になってしまってからではおそらく間に合わない。

ただ、俺の捜査につなげられるだけだ。

それは結局彼女を利用しているのと同じだ。

正義の味方か・・。

聞いてあきれるな。


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第十ニ話へ続く
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