「やなさん、どうでした? 」

俺たちは仙崎の話をうけて、望楽土関係の捜査を行なう申請をだした。

やなさんは、元気のないようすで首を横にふる。

駄目か・・。

「そんな子供の証言じゃ動けないとさ」

「子供って未成年ですが、18歳ですよ」


「確かにな。しかしそれは口実だ。本当のところは・・、やはり捜査できないんだろう」

「前に言ってた、警察の上と望楽土がつながってるって話ですか・・」

そう、こうなったらそれは間違いないだろう。

望楽土がらみの話になると急に署長レベルが首をつっこんでくる。

「そうだな。俺が思うに、うちの署長よりもっと上で何かつながりがあるんだろう」

やなさんが肩をおとす。

「望楽土は単なる宗教団体ではないってことですか? 」

望楽土は表向きには慈善活動を行なっている、まっとうな宗教団体だ。

出雲(いずも)を中心にあちこちに支部がある。

各支部ではホームレス向けの炊き出しなどを行なっており、近隣住民との関係も良好だ。

俺のオヤジも、そんな望楽土の活動を手伝っていた・・。

「ああ、少なくとも普通の宗教団体ではないな。なにしろ、望楽土は信者から金をとってないからな」

「えっ、まさか? 」

普通の宗教団体は信者からお金をとって運営されている。

それが無いとなるといったい、どうやって活動資金を手に入れてるんだ?