「さあな。ただ、手を出せないが何かあったときのために情報は集めておこうって、そんな印象は受けるな。首狩事件はいいチャンスだと思ったんだがな」
そうだ、首狩事件は必ず森本紀代乃の周りで起きている。
まずは森本紀代乃をどうにかして調べなければ。
「別件で引っ張ってくるってのはどうですか? 」
「いや、おそらくそれも無理だろう。向こうはこっちの動きを知ってるみたいだしな。そんなことをすれば、すぐに署長に電話が行くはずさ」
確かにそうだ。
俺達が監視していることは向こうも知っている。
「例の、坂本聡はどうでしょう? こないだの、ビル事故の被害者ということで署に来ていたみたいですが」
「なに? そうなのか? 」
「はい。坂本聡とその女友達が来ていたみたいです。しかも、あれ単なる事故じゃないみたいで」
報告書によると、ワイヤーは爆発物で切断されていた。
坂本聡は事故ではなく、何らかの事件に巻き込まれたと考えていい。
「坂本聡は期待できんだろうが、その女友達ってのは有りかもな」
やなさんがニヤリとしながら言った。
*
連絡すると仙崎梨花はすぐに署まで来てくれた。
彼女は坂本聡と同じコンビニのバイト仲間らしい。
「で、刑事さんアタシに何のようなの? 」
仙崎が言った。
まったく、近頃のガキは口の聞き方も知らない。
「坂本聡と一緒にあった事故に関してなんだが、調書を読ませてもらった。爆発物が使われていたことを見抜いたらしいな」
「ああ、そのことか」
仙崎はがっかりしたような口調言った。
「なんで爆発物だって分かった? 」
こんな子供が、プラスチック爆弾を知っているってのはおかしい。