「さあな。ただ、手を出せないが何かあったときのために情報は集めておこうって、そんな印象は受けるな。首狩事件はいいチャンスだと思ったんだがな」

そうだ、首狩事件は必ず森本紀代乃の周りで起きている。

まずは森本紀代乃をどうにかして調べなければ。

「別件で引っ張ってくるってのはどうですか? 」

「いや、おそらくそれも無理だろう。向こうはこっちの動きを知ってるみたいだしな。そんなことをすれば、すぐに署長に電話が行くはずさ」

確かにそうだ。

俺達が監視していることは向こうも知っている。

「例の、坂本聡はどうでしょう? こないだの、ビル事故の被害者ということで署に来ていたみたいですが」

「なに? そうなのか? 」

「はい。坂本聡とその女友達が来ていたみたいです。しかも、あれ単なる事故じゃないみたいで」

報告書によると、ワイヤーは爆発物で切断されていた。

坂本聡は事故ではなく、何らかの事件に巻き込まれたと考えていい。

「坂本聡は期待できんだろうが、その女友達ってのは有りかもな」

やなさんがニヤリとしながら言った。



連絡すると仙崎梨花はすぐに署まで来てくれた。

彼女は坂本聡と同じコンビニのバイト仲間らしい。

「で、刑事さんアタシに何のようなの? 」

仙崎が言った。

まったく、近頃のガキは口の聞き方も知らない。

「坂本聡と一緒にあった事故に関してなんだが、調書を読ませてもらった。爆発物が使われていたことを見抜いたらしいな」

「ああ、そのことか」

仙崎はがっかりしたような口調言った。

「なんで爆発物だって分かった? 」

こんな子供が、プラスチック爆弾を知っているってのはおかしい。