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第十話:尾行
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アタシの名前は仙崎梨花(せんざきりか)。

共栄女子大学に通う1年生。

見た目はバリバリの日本人だけど、実はこれでもハーフだ。

オヤジはユダヤ人で、そのせいで去年まで4年間イスラエルに住んでいた。

イスラエルって国は、生と死が隣り合わせのような国だ。

何しろ街中で突然、人が爆発したりする。

例の自爆テロってやつだ。

オヤジはアタシに生きる術を仕込んだ。

砂漠でのサバイバルに始まり、敵と戦う方法、爆弾の見分け方。

アタシは優秀な生徒だった。

オヤジはアタシにずっとイスラエルにいて欲しかったみたいだ。

そして、イスラエルに貢献(こうけん)して欲しかったらしい。

でも・・、母さんにはイスラエルでの生活は無理だった。

だから、去年、母さんと日本に帰ってきた。

日本は平和な国だ。

まるで天国みたいな国だ。

だから、そんな中に、そうじゃないものが混じっていると臭うんだ。



二人はじっとしたまま動かない。

坂本と女がさっきから抱き合っている。

アタシは公園の外にいる。

だから二人の会話は聞こえない。

アタシは、引き続き坂本を見張っていた。

いや見張るんじゃないな、見守ってるんだ。

ボディーガードみたいなもんだ。

うん、そうだそうだ。