「ごめんなさい・・。でも・・・・」

キヨノさんは、ためらうように言葉とめる。

「でも・・、その事故もきっとお父さんだと思う・・」

そして、しばらくして消えそうな声で言った。

キヨノさんの涙が僕のほっぺたをつたって流れる。

僕は、お父さんがあれをやったという事実よりも、今のキヨノさんのことのほうが心配だった。

「いいよ。僕は全然ピンピンしてるし」

僕はできるだけ元気そうな声で言った。

「やさしいね・・」

キヨノさんが言った。

「えっ? 」

「サトシ君はやさしいよ・・。こんな私なのに・・」

キヨノさんの肩が震えている。

腕の中でキヨノさんは静かに泣いていた。

僕は、キヨノさんをぎゅっと抱きしめた。

お父さんのことや、事故のことはどうでもよくなっていた。

ただ、こんなにも小さくて悲しそうにしているキヨノさんを守りたいと思った。


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第十話へ続く
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