そして、両手で自分の肩を抱くようにしてうつむく。

「サトシ君が死にそうになった・・。サトシ君が死にそうに・・。サトシ君が・・死ぬ・・ 」

ふるえながら、小さな声でつぶやく。

「キヨノさん・・、大丈夫? 」

僕はその様子を見て不安になった。

僕の声は聞こえないようで、キヨノさんは同じ言葉をつぶやき続けている。

「サトシ君が・・死ぬ・・、死ぬ・・、死ぬ・・」

僕はベンチから立ち上がり、キヨノさんの前に回る。

キヨノさんの目はうつろになっていて、何も見えていないようだ。

僕は肩をつかんで強くゆすった。

でも、キヨノさんは反応しない。

死ぬという言葉をつぶやき続けている。

「キヨノさん、大丈夫。僕は死んでないし、ちゃんと元気だから」

僕はキヨノさんに届くように大きな声でそう言った。

「キヨノさんっ」

もう一度強くゆすりながら、名前を呼んだ。

キヨノさんの目に光が戻る。

「あっ・・サトシ君、大丈夫・・。良かった・・」

キヨノさんは、ほっとした声で言った。

そして倒れるように僕の肩にもたれかかってくる。

キヨノさんからは良い匂いがした。

僕はキヨノさんを抱きしめた。

そしてもう一度言った。

「キヨノさん、僕は大丈夫だから」

僕はキヨノさんに安心して欲しいと思った。