------------
うん。
不思議なんだけど、嫌とか怖いとかあんまり思わないんだよね。
こうなんていうか、現実感が無いっていうか。
------------
------------
まじ?
鈍感もそこまでくればすげぇなあ。
殺人と侵入にもめげずに戦うサッシだね(笑)。
まあでも俺は応援しているよ。
彼女が困っているなら、逆にチャンスじゃね?
ほら女は包容力に弱いっていうじゃん。
------------
また拓にはげまされた。
拓とこうやってメッセージを交換していると不思議と元気が出てくる。
こいつってどんな奴なんだろう?
僕はいつか拓に直接会ってみたいなと思った。
*
その日も僕はキヨノさんを送って誰もいない路地を二人で歩いていた。
もしかしたら警告を無視していることになるのかもしれないけど、気にしないことにした。
何よりもこうして二人で歩いている時間がとても幸せだった。
キヨノさんは僕のつまらない話をいつも楽しそうに聞いてくれる。
僕は思い切って部屋が荒らされていたことを話してみようと思った。
「そういえば、この前家に帰ったら部屋が荒らされててびっくりしましたよ」
僕は冗談っぽく言った。
「えっ? 」
でもキヨノさんはびっくりしたようだ。
驚いた顔をしている。
「あっでも、全然大丈夫です。最初はドロボウかと思ったんですけど、何も取られてないみたいだし。ただ、卒業アルバムにいたずらされていて。それがちょっと気味が悪かったぐらいです」
僕は心配をかけないように手をぶんぶん振りながら言った。
「卒業アルバムにいたずらって、どんな? 」
「なんか鶏(にわとり)の血が僕の写真に塗られてたんですよ。えっ?とか思ったんですが、ふいたら取れたんで大丈夫です」
「そうですか・・」
キヨノさんの表情が暗くなった。
何か考え込んでしまったようだ。
キヨノさんは何か心当たりがあるんだろうか?
僕達はちょうどピアスの男が死んでいた角を曲がった。
すると、いつもは誰もいない路地に人が立っていた。