そう僕はキヨノさんを信じたいと思っている。

まだ全然知らないけど、おびえて困っているキヨノさんを疑いたくない。

刑事が言っていたキヨノさんの高校のときの話だって嘘に違いない。

人を殺して覚えていないなんてことがあるはずがない。

一旦そう思い決めてしまえば、何と無くすっきりした。

明日からは僕がキヨノさんを守ってあげるんだ。



その日の晩、僕は久しぶりに夢を見た。

僕は水の中にいる。

外は明るいのに、水の中は恐ろしいぐらいに暗い。

僕は息が苦しくなってきたので、水面に出ようとした。

するといくつもの手が上から伸びてくる。

その手が僕の頭や背中や体のいたるところを押さえつけてくる。

僕の体は押さえつけられ水の底へ沈められていく。

息がもたない。

苦しい。

もがきながら、意識が遠のくのを感じた。

死・・。

それを意識した瞬間、目が覚めた。

布団から起き上がった僕は全身に汗をびっしょりかいていた。

僕はこれと同じ夢を時々見る。

そしていつも同じところで目が覚める。



次の日のバイト中は時間が気になって仕方が無かった。

11時半を過ぎたあたりから、どうしてもそわそわしてしまう。

12時ちょっと前にキヨノさんが入ってきた。

キヨノさんは僕に向かって笑顔で軽く首を動かす。

僕も同じように笑顔で返す。

やっぱきれいだよ、キヨノさんは。

ロッカーに戻って急いでタイムカードを押すと、雑誌コーナーで本を見ているキヨノさんのところに行った。

「もう大丈夫だったんです? 」

キヨノさんは僕のバイトのことを心配してくれているようだ。

「あっはい、大丈夫です。行きましょうか」