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「水島くん、今度の模試返ってきたよ」

「そうですか」

事務の桜木さんが僕を呼んだ。


「何か受験生らしくないよねー」

「受験生じゃないですから。まあ、母独自のテストはありますけどね」


不服そうに見られてもそう返すしかない。

本当のことだ。


「…もうちょっと緊張感くらい持ちぃよ」

桜木さんの口調が砕けた。
「しゃあないじゃないですか。母が作るテストなんかにいちいち緊張なんかできます?」


「そうは言っても、…ねぇ雪ちゃん」

「えっ、私ですか?」

ユキと呼ばれた少女が顔を上げた。


自習だからか、ソファで英文を読んでいた子だ。