この鵬苑国において凰院とは、医術師・薬師が常駐し、施療院・診療所としての役割を果たす場所であると同時に、近隣村落出身の孤児を養う孤児院でもある。
加えて、宮廷に付属する医薬学舎の末端機関としての意味も持ち、医術師を育てる場所を兼ねる。

もともと、この国で医術師になるためには、都にある王立医薬学舎に所属せねばならない。そうしてはじめて免状取得試験を受験することが許され、もちろん、それに合格する必要がある。当然、都から遠く貧しい村に生まれれば、王都の学舎へ通い続けるのが経済的、地理的に困難で、才能と頭脳があっても結局免許を持つ医術師になることができないという者が多くいたのだ。
そこで、自身も太子時代から医術を学んでいた先々代の抄王は、大胆な医療改革を推進した。まずはじめに、数がまばらな各地の施療院や医院を、人口に合わせた数に調整し、同時に孤児院を併設することも義務付けた。これがのちに鵬苑国の象徴の鳳凰に依って、凰院と呼ばれるようになる施設である。(当時は単に、施療院、とされていた。)