わたしたちがいつもの場所と呼んでいるのは、美しが丘公園という、都市部にしては大きめの公園だ。 家から歩ける距離なのに、足を踏み入れた瞬間、懐かしさがこみ上げた。 あの大きな桜の木の下で、よくキキを待っていたんだった。 桜は少しずつ咲きはじめていて、花見客がぽつぽつとビニールシートをしいていた。 いつの間にかすっかり春だ。 「ウミ」 その声は乱暴にわたしを揺らした。