「おれさ、今月いっぱいで京都に引っ越すんだ」 「えっ!?」 電話しているのがバレたのか、キッチンから母親の声がした。 「そうだ、言ってなかったな。おれ、京大に受かったから」 --ヒッコス? キョウダイ? それ何て意味ですか。 頭はフリーズ、口だけは動いていた。 「……工学部だっけ。行きたかったのって」 「そう、よく覚えてたな。おかげさまで第一志望」 「でも、東工大だったよね?」 ゆっくり、ゆっくり記憶をたしかめる。