チャイムが聞こえてはっとした。



「…ちゃん?いのちゃん?」



結希が私を何度か呼んでいる。


気付いたら放課後で、帰り出す生徒が視界の端にうつる。


「何か、ぼーっとしてるよ?」


結希が心配そうな声で言う。

私はパチパチっと瞬きをした。


考え事の所為で私の視点は合わない。

合わない視点のまま、私は結希のほうを見た。


視線は繋がっているはずなのに
どこか目が合わない私と結希。



私は口を開く。



「浮気ってさ、どうして出来るんだろうね。」



気付いたらそう口にしていた。



‘‘どうしてするんだろうね”ではなく、



‘‘どうして出来るんだろうね”と、



わざと私はそう言葉を選んだ。




「…へ?え、ええ?!」


間が空いて結希は口を開いた。



いきなりの問い掛けに
戸惑っているだけなのか、


動揺を隠し切れずに、
固まってしまったのか。


私は考えるなんて事はしなかった。