駅で手を振って別れる椎名と結希の姿が頭から離れない。
いつもより早く、私は学校に登校するとあのゲラゲラ笑いのくつ箱を確認した。
靴はあったからもう学校に来ているはずだ。
私は妖怪スピーカーがいると思われる2組の教室に向かった。
ちらほらといる生徒、空気が冷たい朝。
気分が違うと、いつもの毎日も違ってみえる。
2組の教室は静かだった。
2、3人いる教室の中に妖怪スピーカーはいた。
「あ、いのーー!!!ギャハハ!」
私が声かける前に私に気付いて妖怪スピーカーは教室を飛び出て来た。
朝からそのテンションは耳がついていけません。
お願いだから音量下げな。
「昨日、あの後2人は駅で別れてそれぞれ帰って行った。」
私は妖怪スピーカーが帰った後の2人の事を話した。
「そっかぁ〜!!ハハハッ!!!」
今だと、君の笑い声も痛々しい。
いつもと変わらないアホ面な笑顔だけど違ってみえる。
「君はどうするんだ」
昨日、聞けなかった事をもう一度私は聞く。
彼女が他の男と一緒に帰ったのを1、2回見ただけじゃ浮気と決めつけるには強引過ぎる。
世の中では彼氏がいるのに他の男と一緒に過ごしたりする彼女はうんと沢山いるだろう。
浮気なのかな、と疑ってしまうのは彼女のことが好きで手離したくないから仕方のないことだ。
それが恋というものだ。
妖怪スピーカーの表情は見れずに私の視線は足元を見つめている。
椎名に話をしに行くのか?
結希が一緒にいた男の正体が分かったんだ、
同じ学校で、同じ学年、すぐに探し出せる。
「ギャハハッ!!!おれはね〜?結希ちゃんの話をちゃんと聞く!!」
「うん」
「一晩考えた!おれが結希ちゃんに出来ることはこれしかない!!ケケケッ!今日は結希ちゃんと放課後一緒に帰るかな〜!ガハハッ!」
「そうか」
妖怪スピーカーから出た答えは、妖怪スピーカーらしい結希を1番に想う答えだった。
なぁ、結希。君は愛されてる。
…羨ましい。
私は自分の胸が痛む理由が分からずにいる。
…浮気って何だろうな。
私は妖怪スピーカーとわかれて、教室に戻った。