「ねぇ…いのちゃん?」
「なんだ?」
結希が不安そうに私の表情を覗き込んでくる。
「ここから先の事を聞いてもひかないでよ…?」
いや、結希だしひくも何も無いだろ。
「大丈夫だ、話せ」
「ふふっ、わかった」
そう言って結希ははにかみ笑顔を見せると目線を落として話し出した。
「会場は旧第一体育館だったからその中にある放送室にあたしは向かったの。そしてその放送室の中に入ると張り巡らせてあるコードとか全部引き抜いた。体育館は電気が落ちて会場は薄暗くなり、あたしがステージの幕のレバーをひくとステージの幕は落ちた」
「あ、思い出した。」
学祭のミスコンで少し騒ぎ起きたって噂を聞いた事がある。
「うん、その騒ぎあたしの所為なの。」
わあお。大胆な事したな、結希さん。
「今思えば、あたし周り見えなさすぎた。ほんとミスコン開催者に悪いことしたよ。反省してる。」
「マジか…」
思わず、私は口を開けて笑う。
「あーもう。本当恥ずかしいよ、いのちゃん笑わないで」
「ごめんごめんっ」
結希がそんな事するなんて、結希素直すぎ。思った事を思った通りにしただけなんだよな、結希は。
妖怪スピーカーと女の子をキスさせたくなくてミスコンが中止になれば大丈夫だと思ったんだろう。
「あたし、ミスコン開催者には悪いけど放送室でホッとしてたんだよね。そしたら木村くんが放送室に入ってきて、結希ちゃんが見えたから来てみたとか言うしあたし慌てたよ。」
慌てるだろうな。ミスコンを台無しにしてんるんだ。そこにミスターNo. 1が来るしびっくりだろうな。
どうしよう、この展開笑えてくるんだけど。いや、笑わんけど。
「それで…木村くんが…結希ちゃん何してるの?とか言って、あたしは黙り込むしかなくて。
木村くん、あたしを真っ直ぐ見て言うの。
…結希ちゃん、おれのこと好きでしょ?って…」
あ、結希が蒸発した。
妖怪スピーカー自信家だな。
「…そ、そそそそれで…」
「結希、落ちついて」
うううぅぅっと、結希は両手で顔を隠してうなる。なんか私が悪いみたいじゃないか。なんでだ。