「全ては木村の所為だな。」
うむ。結希がなんでそんな悩まされなきゃならんのだ。妖怪スピーカーがスーパーサイヤ人になんてなるから悪いのだ。
「あはは、それがね」
え、おい。今、否定しなかったぞ。妖怪スピーカー見捨てられたぞ。まあ、その時は結希は好きじゃなかったんだもんな。
「木村くん、先生にまで文句言っちゃったの。あたし、木村くんが男子に言ったのは良かったんだけど先生はね…違うの。」
「違う?」
「うん。勝手な事する木村くんにその時はじめて本気で怒鳴った。」
結希が…怒鳴る。よほどの事だ。
結希はその時の事を詳しく話だした。
「学祭の1週間前くらいかな、先生があたしに随分長い夫婦喧嘩だなーって言ったのを木村くんも聞いていてあたしが先生に怒ってるのを感じたのかわかんないけど、先生〜?何、生徒にセクハラ言っちゃってんの?ケケケッ!先生までそんなにガキだったんだぁ〜!ギャハハ!!お子ちゃまだな〜!!って木村くんが言って…」
うん、妖怪スピーカーらしくめちゃくちゃ腹立つ訳わかんない事言ってんな。てか、結希の妖怪スピーカーの真似のレベルが凄いんだけど…うん、あえて触れないでおこう。
「あたしは、やめてって何でそんな事するのっていい加減にしてって怒鳴った。木村くんはあたしの事を思って言ってくれたのに、あたしが言いたい事を先生に言ってくれたのに…木村くんを裏切るように木村くんをせめたんだよ。そしたら木村くん怒っちゃった、当たり前だよね。」
結希の気持ちを分からなくはない。けど、まあ妖怪スピーカーは結希を思って先生に言ったんだよな。そりゃあ、おこっ…妖怪スピーカー、怒ったのか。え、アレが怒ったのか。珍しい事もあったんだな。
「すぐに後悔したよ、木村くんに謝らないとって思った。でも、あの時怒りを木村くんにぶつけた時点で引き返せなくて、木村くんと本当に気まづいまま学祭を迎えた。」
結希のこういう話、今聞けてて良かった。結希にもいろいろあったんだよな。
レモンソーダの入っているコップを持つと中の氷がカランと音を立てた。
「先生は木村くんが言った事に怒ってたけどあたしが木村くんを怒鳴ったからすぐに悪かったって謝ってくれたよ…」
結希はそこまで言うと目線を下げた。
「あたし学祭までの1週間ね、ずっと木村くんを目で追っかけてた。あのゲラゲラ笑いは鬱陶しいけど木村くんってさ、素直なんだよね。木村くんの行動には理解しかねるけど木村くんのあの能天気さが人に元気を与えてる事もあるって知った。木村くんみたいな人、1人は必要なのかなって思うようになった。」
…いや、いらないだろ。あの妖怪スピーカー。
「だってさ、木村くんは本当に人が傷つくような事はしないし、うるさい以外迷惑はかけてないし…むしろ、周りから求められる存在だって…やっとあたしは木村くんの事ちゃんと見れたの。」
「そうか」
「うんっ」
目線を上げた結希と視線が交わる。
結希はその頃には妖怪スピーカーを好きになっていたのだな。
頬がほんのりピンクになっている結希を見ると、私も表情が緩む。