上履きからローファーに履き替えると、椎名の横に並んで歩く。
「椎名のクラス、今終わり?」
「そーそー、いつも話長いわー」
椎名のクラス、7組はいつも学活が長く、終わるのが遅い。私と結希の4組は遅くもなく早くもなく普通だ。妖怪スピーカーは2組だっけ?アレのクラスは素晴らしく終わるのが早い。
だから余裕持って尾行するには丁度いいだろう。
椎名からまた柔軟剤の匂いがする。私の家のと同じのだ。
椎名は学ランを着ていない。真冬でも学ランは着ない。白シャツにパーカーを羽織るか、むしろパーカーのみ着てたりのどっちかだ。
ちなみに、これ服装違反だからな。校則守ろうぜ。
猫背ってわけじゃないのに前屈みに見える椎名の姿勢は多分腰から折れてる。この言い方だと骨折みたいに聞こえるけど骨折ではないからな、うむ。
夕日に照らされる私たちが歩く地面には2人の影。歩く度に、ついてきて同じように動く影をぽけーっと見つめる。
同じように1年前、この時間。私と椎名は並んで下校していたな。
あの頃と違うのは、口数と……。
椎名と私の間には特に会話はなかった。
無言が辛いとかはなく、むしろ落ち着いてる。
なぁ、今日も結希を尾行しても収穫は無いと思うぞ。心の中で妖怪スピーカーに告げた。