いつも通り怪しい所などない結希を1日見終えて放課後がやってきた。
「結希は彼氏待ち?」
「ん、違うよー。委員会の資料今日までに仕上げないといけないから居残り」
そう言うと結希は机の上に紙の束を広げ出した。
……。
さすがとしか言いようがないわ。先生に押し付けられた仕事を真面目に引き受けるなんて結希らしい。
手伝いたい所だけど私が役に立つとは思えないし、1人で帰るか。
「私、帰るぞ。先生にちゃんと文句言いなー」
「ふふ、いのちゃん気を付けてねー」
昨日の放課後とは違う、橙色の空と部活動に精を出す生徒たちの声。私は廊下に出ると、くつ箱のある方へと歩き出した。
放課後かぁ。妖怪スピーカーは今日から結希を尾行するつもりなのか。
そんな事を考えていると、くつ箱へ向かう廊下の途中にある階段から人が飛び出てきた。
もう一度言うぞ。
人が飛び出てきた。
「ひゃっほーーーー!!!ケケケッ!ナイス着地!!!!かっこうぃーーっ!!!」
…君かよ。
どこに向かってポーズを決めているのか謎の手の動き。
「あれぇ〜?いの?あ、見た!?今のおれ凄くない!?すぅぱぁーひーろーみたいぃ?どぅ??ギャハハッ」
見た。見たよ、君…二階から階段すっ飛ばして飛び降りて来たよな。あと一歩私が前へ出ていたら大事故だぞ。ほんとに。
てか今私の存在に気づいたという事は君は1人でもそんなにハイテンションなのか。1人で小学生みたいな事やってんのか。
そのポーズも1人でやってんのか妖怪スピーカーさんよぉ。
つくづく、君の脳みそは謎だわ。