「こちら椎名ー」
「ああ、どうした」
電話に出ていきりなりそれかと言いたくなるけど椎名はいつもこうなのでもう気にしない。最近、私のどうした発言率高い気がする。なんでこうもみんな私にどうしたを言わせたがるんだ。
「英和辞典、中央廊下のとこまで持ってきて。」
私が椎名に英和辞典貸す事は前提なのね。
「良いけど、なんで電話?」
英和辞典どこにやったっけなーと考えながら椎名に聞く。
「俺今、第二体育館にいるから」
時計を見て今、何時限終わりの休み時間かを確認する。なるほど、次が4時限か。
「分かった、ロッカーに行ってから行くから待ってて」
「はーいっ」
通話が切れたのを確認して席を立つ。
「彼氏?」
話の流れを見ていたのか結希が聞いてくる。
「うん、ちょっと行ってくる」
「行ってらっしゃい。あ、あと5分で次だから気を付けてね」
チラッと時計を見た結希が休み時間の残り時間を教えてくれる。
「ありがと」
そう言って、私が急ぐはずは無いんだけど私は教室から出てロッカーのある場所へ向かう。
この高校は単位制で
一人一人に時間割りがあるため
毎時間使う教室はバラバラになる、
そのため教室の後ろにロッカーがある事はなく、
ロッカーは別で個人に分け与えられている。
私のロッカーは中央廊下とは真逆の方向の廊下の先の突き当たりにある。
この高校の面倒くさいとこだ、
自分の持ち物はすぐ近くには無い。
ロッカーの前に着くと鍵を開けてロッカーの中から英和辞典を取り出す。
和英辞典ではなく英和辞典だ、
バカな私にはこの2つの違いは分からん。
もしかしたら同じものかもしれん。
来た道を戻って中央廊下へ繋がる廊下の方へ進みやっと中央廊下についた。
中央廊下の途中で左へ曲がり中庭を進み階段を上がり中庭の上で校舎を繋ぐ二階廊下を真っ直ぐ歩いて階段を下りると第二体育館がある。
今説明して思ったのだが、この学校の構造の説明は
一生したくないことランキング1位だ。
ややこし過ぎて理解しかねるわ。
1日じゃ説明しきれないぞ。今のも第二体育館の位置が伝わったか危うい。
んで、中央廊下の突き当たりを左へ曲がり渡り廊下に出て別校舎へ入るとすぐ階段があり二階へ上がると椎名のクラス、7組教室がある。
これも伝わったか分からん。
まあ、こんな校舎を歩き回るには時間がかかるから椎名は電話を使ったのだろう。
そんでもってもう私は2度と校舎の話はしたくない。