それでも、結希は私をせめたりせず話しかけてきた。
「いのちゃん、昨日のことだけど…」
結希の目は少し腫れぼったいような気がしたけど、昨日までとは違うすっきりと優しい顔をしていた。
「…あたしなんかが泣くべきじゃなかったよね。いのちゃんにあたしは本当に酷い事をした。一生かけても償えない過ちだよ…あたしが悪かった。今でもあたしが悪い。…いのちゃん、ありがとう。本当にありがとう。」
結希は‘‘ごめんなさい”の言葉を使わなかった。
その結希の優しさとしっかりした所が
私は大好きで…私の胸を苦しめる。
「結希、本当にいいから。
真実を知れただけで良かったし。」
私の言葉に偽りはない。
結希は困ったように眉を下げてはにかみ笑いをした。
「…椎名くんのこと、たけど。あたしが聞けるようなことじゃないし私が言うのもおかしいと思う。
だけど言わせて、あたしも椎名くんも
ゆるしてもらおうなんて思ってないよ。
ただ、知って欲しいの。もう過ちを繰り返さない、
本当に好きな人だけを見てる…
この気持ちに嘘はない…真剣だよ、本物だから。
ムリに信じろなんて言わない。だけど知っていて。」
結希は口を重く開いてそう言った。
そんなこと…
「…わかってるっ」
私の声は珍しく弱々しかった。
「だったら…!」
「出来ない、話したく…ない…」
私は卑怯だろうか。
結希に笑いかけた。