教室はざわざわとしている。
その中に混じって結希の声がする。
「…あ、あの…いのちゃん?」
申し訳なさそうに呼ぶ声。
私は体を起こして結希のほうを見た。
「えっと、その…椎名くんが…」
そう言う結希の視線の先には出入り口に立つ椎名の姿があった。
「いないと言って」
「…で、も……わかった」
結希は困ったように返事した。
そりゃそうだ、椎名から私の姿は見えているはずだ。
結希、ごめん。
椎名が昨日私が言った事を守るはずがないと分かっていたけど、朝から来るなんて厄介。
あー、結希にも話しかけないでって
言っておけば良かった。
後悔。