結希の彼氏は結希が犯したことを
悲しまないと思う。


だけど、


そのことを知ってしまったら
傷付くんじゃないか。



結希は彼氏を裏切ってない。
妖怪スピーカーが好きな結希はちゃんとそこにいる。
結希の妖怪スピーカーへの気持ちは変わってないから。


「いっ…」

「結希、唇を噛んだら血が出るぞ」


椎名が何かを言おうかしたけど、唇を噛み締める結希を見た私の発言によって遮られた。


結希は泣くのを必死に堪えてる。


私はハンカチを取り出して結希に差し出した。


「使って。泣きたくないなら、代わりに噛んでいいから」


結希は泣くのを嫌うはず。


私は結希の手を取ってハンカチをもたせた。


結希の体が揺れる。
苦しいだろう。吐き出してしまいたいだろう。




私が結希をそうさせたんだ。


こんなにも純粋で素直な結希を。