きみのことがすきなんだ。

一通り話し終わったと同時に掃除が終わったという知らせのチャイムが鳴り響いた。

「あ、チャイム鳴っちゃったね」

私がそういう前に男の子はすっと立ち上がっていた。

「ま、待って！！ハンカチ、洗って返す、ね」

このままじゃいけない！と思ってばっと勢いよく私が顔を上に上げると同時に男の子は私の両目を片手で包みこんだ。まるで、自分を私の目から隠すように。

「……別に、いらないから」

あげるよ、それ。と今にでも消えかかりそうな小さい声で男の子は言った。

「え、でも…」

「いいってば……」

それじゃあ、と男の子は私が顔を見る前に踵を返してさっさと行ってしまった。

「あ、えと、は、話聞いてくれてありがとうー！ハンカチもー！大切に使うねー！」

私が叫ぶと男の子はピタリと止まり、ひらひらとやる気無さげに後姿のまま手を振ってくれた。

真昼間の日に当った彼の髪が、茶色に透けて、とても綺麗だった。