嗚咽をしながら私は左腕でごしごしを涙を拭いていた。
目……赤くならないといいけど。

そう思っていると、ふ、と左腕に何かやわらかいものが触れた。それをゆっくり左手でつかんで、やっとハンカチだって理解した。
泣き顔を見られたくなくてうつむきながら私は即座にありがとう、と顔の知らない誰かに礼を言うと無遠慮にごしごしと赤いハンカチで涙を拭いた。(流石に鼻はかまなかったけど)拭いている途中、相手が私を横切ろうとしたのが雰囲気で分って待てと、相手のズボン(あ、男の子だったんだ)をがしりとつかんで、つかんだ時に変な方向になった体を安易に相手の方向に向き直した。

「ハンカチありがとうございます。これも何かの縁です。どうか私の話に付き合ってくださいぃー」

相手は迷惑だ。そんなこと分っていたけど、目の前にある優しさに私はすっかり甘えてしまっていた。
私がぶちぶちと話をはじめると最初は立っていた男の子もしゃがんで聞いてくれた。(聞いているのかは分らないけど)最初男の子ズボンをつかんでいた私の手もいつのまにか相手の腕部分のシャツを掴んでいた。

「…べつにね、その子が嫌いって訳じゃない、むしろ好き、けど、私に教えてくれなかったのがくやしくてくやしくて……」
普段の私なら顔も知らない誰かにこんな話なんか言わないんだけどなぁ。変なの。