「あ、そういえばね、五月ちゃんに合わせたい人がいるの」

二人揃って少し赤い目をしながら校門をくぐった時に、蜜乃がそう言った。

「合わせ、たい人……?」

誰…?と私が聞くと蜜乃は少し頬を染めてふふ、と笑った。

「いくら鈍感な五月ちゃんでも、この話の流れだったら分るはずだよ…?」

ちょ、蜜乃さん、あなた何気にひどいです。…この話の流れ……?って、

「あ!」

「ほら、わかったでしょ」

私は無言でコクリ、と頷き、蜜乃が気付かないほど静かに唾を飲み込んだ。

「丁度ね、待ち合わせしてたんだ。ちゃんと五月ちゃんにも紹介したかったし…あ、行きたくないんなら行かなくても、」
「行く。絶対行く」

会え、るんだ。
蜜乃の、彼氏と……。
私は、スカートのポケットの中で眠っている名も知らない男の子のハンカチを握った。

この決断が、ヤツと私を会わせる道筋になるなんて、このときの私は思いもしていなかったのだ。