このままでは、ルカの体力が持たないのでは……と、私が不安に駆られた時、
ルカが夜盗たちにまで聞こえる声で、盛大な溜め息を吐いて見せた。
「……警告にも気づかない、か。あとで後悔するなよ」
そう言って、持っていた剣を握り直す。
夜盗の一人が嘲るように笑った。
「ふん、何のことだ。後悔するのは……お前の方だろっ!」
そう言って、男がルカ目掛けて迫りくると、頭上高くから長剣を振りかざした。
しかし、ルカは微動だにしない。
(危ないっ)
私は、思わず目を瞑った。
暗闇の中で、私の耳に、剣が弾かれる高い音と、男の悶絶するような声が聞こえた。
「ぐぅっ……!」
私は、驚いて目を開けた。
そこには、腹部から血を流して倒れている男と、それを青い顔で見つめる夜盗たちの顔があった。
倒れている男は、先程、ルカに向かって剣を向けていた男だ。
ルカは、血に塗れた剣を振って血を払うと、再び剣を構えた。
(ルカがやったの……?)
血を流して倒れている男は、微動だにしない。
死んでいるのだろうか。
私が茫然とそれを見ていたら、ルカがこちらを振り向かないまま言った。
「目を瞑っていろ。……すぐに終わる」
その言葉に逆上した夜盗たちは、闘志を再熱させると、一斉に剣を手にルカ目掛けて襲いかかった。
しかし、今度は、ルカの容赦ない反撃に、一人、また一人……と、血を流しながら倒れていく。
(……これで5人…………す、すごい。
ルカが強いのは知ってたけど……
こんなに間近で、それも実戦なんて、見た事なかったもの)
私は、ルカに目を瞑っていろと言われたことも忘れて、目の前に繰り広げられている光景から目が離せなかった。
ルカは、敵の攻撃を剣で受け流すと、今度は剣を払い落とすだけでなく、確実に相手の急所を狙って反撃を続けた。
暗い所為で、赤い筈の血飛沫が黒い何かの液体にしか見えず、不快感はあまり感じなかったが、
ルカの前に倒れる男たちの数が増えるに従い、
周囲に血の匂いが充満した。
(……8人……10人……12……)
私は、倒れていく男たちの数を数えることで、冷静さを保とうとした。
「くっそー……こいつ、何でこんなに強いんだ。
こんな話、聞いてねぇぞ!」
ついには、20人以上はいた夜盗たちが、立っているのは、たった3人きりとなった。
(……本当に、すごい。
この国で、剣でルカに適う人なんて、本当にいないんだわ)
私は、改めてルカのすごさを知った。
信じていなかったわけではないが、少しでも不安に思ってしまったことがルカに申し訳ない。
ルカは、真っ黒な液体に汚れた剣を自分のマントで拭うと、残った3人の夜盗へ剣先を向けた。
「お前らの敗因は、己の力量と、相手の力量を見極められなかったことだ」
夜盗たちは、その表情に明らかな恐怖の色を浮かべてルカを見ていた。
手には剣を持ち続けているが、無意識の恐怖から手が震え、逃げ腰になっている。
これなら勝てる、と私が確信した時、
ふと背後から近づく白い影に私は、気が付かなかった。
突然、背後から白い腕が伸びてきて、私の視界に入ったと思ったら、
気が付くと私は、何者かに羽交い絞めにされていた。
「……え、きゃっ!」
「アリス?」
ルカが私の声に振り返った。
慌てて私の方へ駆け寄ろうとしたが、
私の背後にいる人物の次の言葉で動きを止める。
「動くな。大事なお姫様の顔に傷が付いてもいいのか?」
その声に私は聞き覚えがあった。
昨夜、私を殺そうとしていた白い謎の男だ。
私の首筋に、ひんやりと冷たい金属が触れるのがわかった。
どうやら刃物を突き付けられているようだ。
「……る、ルカ」
「きさまっ……! アリスを離せ!」
ルカが鬼のような形相で私の背後にいる人物を睨みつける。
でも、私を人質に取られているので、動くことができない。
「このお姫様がそんなに大事か。
……なら、態度で示せ」
どういう意味かと私が目線を背後にやろうとすると、
白い男は、私を拘束している腕に力を入れて、無理やり私を前に向かせた。
「あんたは、よく見ているといい。
あの男の忠誠心とやらが、どの程度のものなのか。
そして……」
白い男が私の耳元で囁くのと同時に、
ルカの周りを、残った夜盗の3人が取り囲む。
先程までの劣勢を忘れて、勝ち誇ったような顔で剣を構えた。
「あんたのために、忠誠心を持った兵が一人、死ぬところを
しっかり目に焼き付けておくんだ」
私は、耳から血の気が引いて行く音が聞こえた。
「ひ、卑怯者っ! ルカは……ルカは関係ないでしょう。
私を連れて行きたいのなら、連れていけばいい!」
「アリス!」
ルカは、余計なことを言うな、とでも言うように、私に向かって無言で首を横に振る。
「剣を捨てろ」
白い男の言葉は、ルカへの死刑宣告のように聞こえた。
ルカは、持っていた剣を遠くへ投げ捨てる。
(どうしよう、このままじゃ……ルカが殺されちゃう)
ルカが夜盗たちにまで聞こえる声で、盛大な溜め息を吐いて見せた。
「……警告にも気づかない、か。あとで後悔するなよ」
そう言って、持っていた剣を握り直す。
夜盗の一人が嘲るように笑った。
「ふん、何のことだ。後悔するのは……お前の方だろっ!」
そう言って、男がルカ目掛けて迫りくると、頭上高くから長剣を振りかざした。
しかし、ルカは微動だにしない。
(危ないっ)
私は、思わず目を瞑った。
暗闇の中で、私の耳に、剣が弾かれる高い音と、男の悶絶するような声が聞こえた。
「ぐぅっ……!」
私は、驚いて目を開けた。
そこには、腹部から血を流して倒れている男と、それを青い顔で見つめる夜盗たちの顔があった。
倒れている男は、先程、ルカに向かって剣を向けていた男だ。
ルカは、血に塗れた剣を振って血を払うと、再び剣を構えた。
(ルカがやったの……?)
血を流して倒れている男は、微動だにしない。
死んでいるのだろうか。
私が茫然とそれを見ていたら、ルカがこちらを振り向かないまま言った。
「目を瞑っていろ。……すぐに終わる」
その言葉に逆上した夜盗たちは、闘志を再熱させると、一斉に剣を手にルカ目掛けて襲いかかった。
しかし、今度は、ルカの容赦ない反撃に、一人、また一人……と、血を流しながら倒れていく。
(……これで5人…………す、すごい。
ルカが強いのは知ってたけど……
こんなに間近で、それも実戦なんて、見た事なかったもの)
私は、ルカに目を瞑っていろと言われたことも忘れて、目の前に繰り広げられている光景から目が離せなかった。
ルカは、敵の攻撃を剣で受け流すと、今度は剣を払い落とすだけでなく、確実に相手の急所を狙って反撃を続けた。
暗い所為で、赤い筈の血飛沫が黒い何かの液体にしか見えず、不快感はあまり感じなかったが、
ルカの前に倒れる男たちの数が増えるに従い、
周囲に血の匂いが充満した。
(……8人……10人……12……)
私は、倒れていく男たちの数を数えることで、冷静さを保とうとした。
「くっそー……こいつ、何でこんなに強いんだ。
こんな話、聞いてねぇぞ!」
ついには、20人以上はいた夜盗たちが、立っているのは、たった3人きりとなった。
(……本当に、すごい。
この国で、剣でルカに適う人なんて、本当にいないんだわ)
私は、改めてルカのすごさを知った。
信じていなかったわけではないが、少しでも不安に思ってしまったことがルカに申し訳ない。
ルカは、真っ黒な液体に汚れた剣を自分のマントで拭うと、残った3人の夜盗へ剣先を向けた。
「お前らの敗因は、己の力量と、相手の力量を見極められなかったことだ」
夜盗たちは、その表情に明らかな恐怖の色を浮かべてルカを見ていた。
手には剣を持ち続けているが、無意識の恐怖から手が震え、逃げ腰になっている。
これなら勝てる、と私が確信した時、
ふと背後から近づく白い影に私は、気が付かなかった。
突然、背後から白い腕が伸びてきて、私の視界に入ったと思ったら、
気が付くと私は、何者かに羽交い絞めにされていた。
「……え、きゃっ!」
「アリス?」
ルカが私の声に振り返った。
慌てて私の方へ駆け寄ろうとしたが、
私の背後にいる人物の次の言葉で動きを止める。
「動くな。大事なお姫様の顔に傷が付いてもいいのか?」
その声に私は聞き覚えがあった。
昨夜、私を殺そうとしていた白い謎の男だ。
私の首筋に、ひんやりと冷たい金属が触れるのがわかった。
どうやら刃物を突き付けられているようだ。
「……る、ルカ」
「きさまっ……! アリスを離せ!」
ルカが鬼のような形相で私の背後にいる人物を睨みつける。
でも、私を人質に取られているので、動くことができない。
「このお姫様がそんなに大事か。
……なら、態度で示せ」
どういう意味かと私が目線を背後にやろうとすると、
白い男は、私を拘束している腕に力を入れて、無理やり私を前に向かせた。
「あんたは、よく見ているといい。
あの男の忠誠心とやらが、どの程度のものなのか。
そして……」
白い男が私の耳元で囁くのと同時に、
ルカの周りを、残った夜盗の3人が取り囲む。
先程までの劣勢を忘れて、勝ち誇ったような顔で剣を構えた。
「あんたのために、忠誠心を持った兵が一人、死ぬところを
しっかり目に焼き付けておくんだ」
私は、耳から血の気が引いて行く音が聞こえた。
「ひ、卑怯者っ! ルカは……ルカは関係ないでしょう。
私を連れて行きたいのなら、連れていけばいい!」
「アリス!」
ルカは、余計なことを言うな、とでも言うように、私に向かって無言で首を横に振る。
「剣を捨てろ」
白い男の言葉は、ルカへの死刑宣告のように聞こえた。
ルカは、持っていた剣を遠くへ投げ捨てる。
(どうしよう、このままじゃ……ルカが殺されちゃう)