見つかった。

私は背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。

…見下ろす1号。

月明かりに照らされたその表情は…薄笑みを浮かべていた。

無表情な1号が笑みを…?

その笑みに、戦慄する。

「小山田哲平を渡せ」

抑揚のない声で呟く1号。

「……っ」

私は小山田君を庇うように立つ。

渡す訳にはいかない。

ここまで逃げてきた意味かなくなってしまう。

何より機関に小山田君を渡せば、彼はモルモット同様の扱いを受けるだろう。

訳のわからない薬品を幾つも幾つも投与され、1号のように精神にまで異常を来たす事になってしまうかもしれない。

或いは廃人になるまで実験で酷使されるかもしれない。

そんな事がわかっていて、私は小山田君を渡せない。

私の無言はそういう意味の意思表示だった。

…それを悟ったのか。

「よく拒絶してくれたわね、2号」

薄笑みだった1号の笑みが。

「ハハハハハ…ハハハハハハハハハハ!…アハハハハハハハハハハハハハッ!」

狂気じみた高笑いへと変わった。

同時に。

「!!」

1号の背後に、数台の廃車が念動力で浮遊する。

「覚醒者2号。これよりお前を機関への背信行為により、処理する」