「ここは小学生の頃からよく忍び込んでたんだ…あんまり配置が変わらないからな…今でも通り抜けられる場所はしっかり覚えてる…」

複雑に入り組んだスクラップの隙間を、小山田君は迷う事なく進んでいく。

ここに来て、小山田君の方が頼りになるようになって来た。

ここからは彼に主導権を渡した方が安心かもしれない。

そんな事を思っていた矢先。

「……!!」

突然、私の脳裏に映像が浮かんだ。

これは…この映像は!

「待って小山田君!!」

思わず前を行く彼の肩をつかむ。

直後。

「!!?」

私の脳裏に浮かんだ映像と同じ光景が、目の前で起こった。

いきなり空中から落下してきた廃車三台。

それが地面に垂直に突き刺さるように、目の前に落ちたのだ。

交通事故のような金属がひしゃげる音を立てて、三台の廃車は倒れる。

「偶然予知できてよかったわ…」

私は胸の鼓動を抑えきれないままに言う。

しかし。

…スクラップの積み方が悪かったのか。

いや、このタイミングで崩れ落ちてくるなんて都合がよすぎる。

そして、そんな私の推測通り。

「見つけたわ」

頭上。

積み上げられたスクラップの上から、黒ずくめの女が私達を見下ろしていた。