埃が舞い上がり、轟音を立てて鉄骨が崩落する。

「はあっ…はあっ…はあっ…はあっ…」

大きく呼吸しながら、私は崩れ落ちたビルを見据えた。

…並みの人間なら確実に押し潰されているだろう。

鉄骨むき出しのビルの真ん中にいたのだ。

どんなに足が速くても逃げ切れるものではない。

ただ。

「……」

呼吸が整った後、私は崩れ去ったビルをまじまじと観察する。

…本当に押し潰されたのなら、血の匂いのひとつもしてくる筈だ。

なのにそれらしき匂いは全く感じられない。

「…2号め…逃げたか」

私は小さく呟いた。