走る。

ただひたすら走る。

アテなどない。

作戦などない。

あの1号から、どうやったら逃げ延びられるのか。

何も分からないまま闇雲に走った。

…必死に付いて来る小山田君は、まだ時折苦しそうに頭を押さえる。

発症の際の頭痛がまだ続いているようだった。

休ませてあげたいのは山々だけど、ノンビリしている暇はない。

と。

…背後からエンジン音が聞こえた。

走りながら振り返る。

途端に。

「!」

車道ではなく、私達の走っている歩道を疾走して、バイクが突っ込んできた!

「小山田君!」

彼を抱き締めるようにして引き寄せる。

それでうまくバイクの体当たりを避ける事ができた。

…バイクは数十メートル先でUターンし、停止してこちらを見据える。

バイクにまたがっているのは長い髪の女。

その髪で左目は隠れている。

「1号…!」

私は小山田君を抱き締めたまま、彼女を睨んだ。