「狙われてる?」

俺は思わず怪訝な表情を浮かべた。

だってそうだろう?

誰が見ず知らずの女性に呼び止められて、『狙われてますよ』なんて言われて信じるんだ?

…俺の表情を見て、疑われていると気付いたのだろう。

「黛まどかって女に覚えは?」

女性は知らない名前を口にした。

いよいよ頭の中身を心配した方がよさそうだ。

俺はその場を走り去ろうと身構え。

「今日、学校で予防接種を受けたでしょ?」

女性の言葉でハッとした。

そういえば俺に注射をしたあの若い女の人…『黛』ってネームプレートつけてた…。

「思い当たる節があるみたいね」

女性は小さな溜息をひとつつく。

「時間はいいかしら。少し話がしたいわ」