エピソード1。
-副総長-

「友梨!先に行け!!!」

『え!?でも!!』

「俺は大丈夫だ!お前が捕まるほうがやべぇだろ!?」

『みんなのこと見捨てられない!!』

「友梨!大和の言うとおりだ!引くぞ!」

『裕紀!?いやっ!離して!!!』

「サンキュー裕紀!わりぃな友梨…」

「ぜってぇ戻れよ、大和」

「…あぁ」

『大和っ大和!!怪我しないで…早く戻ってきて…』

裕紀に引っ張られながら大和に叫ぶあたし。
大和はそんなあたしに、
拳を掲げて口元をゆるませた。
黒と白にわかれた男たちが殴り合い
金属を振りまわす中、
どこから現れたのか大勢の武装した警官が走り込んできた。
互のチームは喧嘩をやめ、
それぞれの長を守るために警官へと向かっていく。
あたしは裕紀に無理やり乗せられた車の中から、その光景を見ていることしか出来なかった。
動き出した族車を追いかけようとするパトカーに自らのバイクで突っ込むやつ。
抑え込まれてる仲間を助け出すやつ。
あたしはただ、
そいつらの力を信じるしかなかった。

────……
その日、大和からの連絡はなかった。
大和が捕まったと知ったのは翌日の新聞を見て。
あの日の抗争の意味を知らない大人たちは
言いたい放題に悪く記す。

『ふざけんなよ…大和のばかやろう…』

あたしは大和のことで頭がいっぱいになっていて気づけなかった。
静かに動き始めた"龍"(ドラゴン)に…。