あくまで逃れようともがいていた沖田に、にっこりと微笑む。
途端にそいつは動きを止め、しまりなく口をパクパクしながら間の抜けた顔で俺を見下ろすから笑える。
くそぅ、おぼこい奴め。
「…………へ、んな冗談は止めてくださいっ」
「冗談ちゃうよ、好きやで、ちゃんと」
多分。そら虐めたくはなるけど、それもまぁ愛情表現の一つやっちゅーことで。
俺の言葉がそんなにも意外だったのか、沖田は眼を揺らして黙り込む。
初めの頃を思えば仕方ない気もするが、それでも最近は我ながらわかりやすいと思っていたのに。
藤堂くんの事も然り、やはりこいつは少々鈍い。
「せやし自分も逃げてんと認め?いっぺんこっきりの人生や、正直に生きた方がよっぽど楽しいで?」
皆が寝静まった静かな夜。
言葉が途切れれば、木の葉の揺れる音だけがどこか密やかに辺りに響く。
すっかり抵抗をなくした沖田の後ろで軽く手を組み、少しだけ顔を寄せると、ごくんと唾を飲み込んだ沖田はそれでも目を逸らさずにただ黙って俺を見る。
怯えの中にも微かな期待を滲ませたその眼。
こいつ自身わかっているのだ。それを今、はっきりとさせてやるだけ。
「自分、俺のこと好きやろ?」