昼間の巡察は日が傾き始めた八ツ半を目処に切り上げる。
戻ってお風呂と夕餉を済ますと今度は夜間の連中の出番だ。
隊が細かく分けられた事によってその当番も以前より分かりやすくなった。
加えて、自然と同じ組の隊士と話す機会が増えたのは、今までみたいに平助や山崎と上手く話せない私にとって幸いだった。
うちの皆といれば、二人が寄って来ることはなかったから。
そろそろ私も、守られてばかりの輪の中から抜け出す頃合いだったのかもしれない。
共に歩く仲間に感慨めいた安心感を抱きながら通りをゆく。
四条界隈はまだ人通りも多い。そんな雑踏をすり抜け、私達は西へと歩みを進めた。
真っ直ぐに続く似たような景色、長屋と長屋の間から脇に延びる名もない路地なんて無数にある。
そこを見たのもたまたまだ。
なのに、どうしてあいつがいるんだろう。
黒い長着を纏った散らし髪。
あいつがどんな任務についているかは私達に知らされることはない。
でも、穏やかに目尻を下げて小さな童を抱いたそれはどう見たって隊務じゃない。
一瞬、その奥に見えた女の人は一体誰……なんだろう。
「……沖田組長?」