あいつのあれは所詮お遊びだ。


時折思い出したように寄って来るだけで、顔すら見ない日だってざらにある。


気紛れな猫が相手をして欲しい時だけふらりと喉を鳴らしてすり寄って来ているのと一緒。


その証拠に、女扱いするわりにその扱いは結構雑で痛かったり苦しかったり。


到底私をその辺の女子と同等に見ているとは思えなかった。


それに……私は男として此処にいる。その為に私は全てを捨てたのだ。なのにここにきて色恋に気を取られるなんて有り得ない。



何も望まない。
望んじゃ、駄目なんです。



此処には土方さんも平助もいる。私が誰かを想うなんて許される訳がない。


こんな感情、要らない。


気にしたら負け。


大丈夫、今まで通り適当にやり過ごしたら良い。極力あいつには関わらないようにして隊務に集中する。


……平助だってそうしてる。


土方さんへの想いだってこうして薄まったのだからきっと平気、です。


胸に湧いた少しの痛みから逃れるように、ぎゅっと目を閉じた。



……そう、山崎なんてただの猫だと思えば良いんです。


気儘な黒猫。猫だから構ってやりたくなる、猫だから可愛い、猫だから。猫、猫、猫……。





「総司?」

「にゃいっ!?」